・。*明日晴れるかな*。・

薔薇、猫、物語、弁当作りとショパンが好き!今は雨でも虹色の人生めざして航海する日々の出来事*


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『ゆめであえたら』♪



 
本ゆめであえたら本  *2016*
            




暖かなお正月だった。

いつものように午後六時にピアノの練習が終わると
久しぶりに一人で外へ出た。
手ぶらでジャージの上着ポケットに
財布と携帯を入れただけだった。

辺りはすっかり暗くなり
街灯に照らされる仕事帰りの人や
買い物帰りの人や
走る人や歩く人で
誰もお互い気にすることなく通り過ぎていった。

去年の七月に愛猫ブーが亡くなるまで
入院一ヶ月のあと
約五ヶ月はこの時間に毎日ブーを自転車の籠に乗せて
動物病院に出かけていた。
ブーの自転車用キャリーバッグは
布の袋と洗濯用メッシュ袋を合わせて
手作りにしては機能的に出来たものだった。

冬の夜空は透き通って星が美しく瞬いて見えた。

途中の入り組んだ信号も
いつも行列が出来て若者で溢れていたラーメン屋の前も
今日はお正月の三が日で、しんとしていた。
ラーメン屋を過ぎてからすぐのバス停の先に長い坂道がある。
そこをのぼりきって、交通量の多い大きな交差点を5分ほど歩き
小さな信号のある十字路を左に曲がってすぐに動物病院はあった。

真っ暗な動物病院はセキュリティシステムの幽かな明かりだけが
深海の生き物のように光っていた。
入り口脇の植え込みの前に行った。
細い葉がみっしり生えた常緑樹だ。
周りは住宅街でひっそりと暗闇に沈んでいた。
携帯の明かりを照らしながら 片手で葉の奥をまさぐり
何度も場所を変えて顔を近づけて探した。
あるものを探していたのだ。
それを探すためにこのお正月の休みであろう動物病院に来たのだ。
それはおまじないだった。
ブーの白い毛を2cmくらいに丸めたもので
「きっと治りますように」と願いを込めて枝葉に隠した
自分流おまじないだ。

去年の七月、おまじないは雨にも負けず風にも負けず
確かにあった。
ブーとの別れのことですっかり影が薄くなっていたものだったけれど
けして忘れてはいなかった。
最後のけじめはちゃんとつけようと思っていた。
八月は歯を食いしばってコンクールの作品を書き
九月はやっとの思いで仕事や習い事や日常をこなし
十月はへとへとになりながら日をやり過ごし
十一月は張り詰めていた気持ちが身体に出はじめ
十二月は毎日ぐったりと身体を休めることに専念した。

これだけの月日が経てばあるはずもない、という思いと
もしかしたらある、という思いがシーソーのように
大きく揺れ、やっとこの日が来たのだ。

手を何度も何度もいろんな場所に入れ
携帯で上や下も照らしてみた。
私は肩の力を抜いて深く長くため息をついた。

なかった。

暗く閉ざされた動物病院のガラスの入り口ドアを見た。
その奥には今も帰りを待ち望む犬や猫が狭いケージの中で
横たわっているのだと思うと
ブーもそうだった日もあったのだと思うと
切なくなった。

突然音も無く眩しい車のライトに照らされた。
背後から獲物を狙う巨大な生き物が来たとおもった。
あまりにも機械とは思えない遅さで黙って通り過ぎていった。
全てのものに脅えた瞬間だった。
私はまるで野良猫。いや野良猫以下。
そんなことを考えてるふりをしてその場を去った。

始まった夜はなかなか通り過ぎない。

通院してた時と同じ帰り道を通った。

来た道と反対側を行くと途中にマツモトキヨシがある。
自転車を止めるとキャリーバッグに入ったブーを肩に背負って
よく買い物をしたものだ。
療法食だったけれど少しくらいならいいと先生から言われ
ブーが好きなネコ缶を買った。
そこを出て坂を下ったところにリカーキングという激安店がある。
そこでは閉店間際によくブーを連れて駆け込んだものだ。
朝から仕事で買い物が出来ない日はあれこれ食材を買い
ブーと荷物の重みのせいで
自転車は水を吸った砂袋のようになった。
毎日のようにこの繰り返し。ブーと一緒だった。

その思い出のキャットロードを歩く私の手に
今は荷物もブーも無い。
唯一の財布は持っていたけれど、この日使うことは無かった。

真っ暗闇の森の中にある自宅の前に着いて
薄明るい外灯の光の中
門扉を開けると、キイッと錆び付いた鉄の音がする。
あの時もこの時も「今帰ったよ」の我が家の合図だ。
門扉を閉めてレンガ造りの階段を上がり
何も持たず体一つで玄関に向かった。

ブーと一緒に帰ったときは
玄関に入るとにゃあと鳴いて
キャリーバッグから飛び出したものだ。
そして家の中がパアッと明るくなったものだ。

「ただいま」と私の声だけが短く鳴いた。
いつもの家の匂い。微かなテレビの音。家族の気配。
それらが目に見えない湿った空気と供に私の体に
まとわりつくだけだった。

いつかゆめでブーとあえたなら
その夜明けはきっと
凍りついたオレンジシャーベットの溶ける
甘い香りがするんだろう。



おわり


by しゃぼん


(日記を小説風にしたら・・・と
 書いてみた。 
 あ〜〜なんか久しぶりに「しゃぼん」になったら
 ちょお〜〜〜〜気持ちいい〜〜〜〜!^^*)



***


今日も来てくれてありがとう***

またね!
いい連休過ごしてね!


I love youcat3cat5羽羽星花星







 



| 2016.05.04 Wednesday (01:14) | ブーのこと | comments(4) | trackbacks(0) |
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| 2018.10.05 Friday (01:14) | - | - | - |
Comment
丁寧に時を過ごされてきたにゃんすずさんの日々が
ぎゅっと凝縮されて、
最後にオレンジシャーベットの香りととともに
ブーちゃんの姿が頭に残る、すてきな日記でした。
またね、しゃぼんさん。
| ぐるこ | 2016/05/04 9:30 AM |
新しい小説が始まった…と思ったら
そうか、ブーちゃんとの思い出だったんだ〜。
確かに、存在していたものがある日なくなることの空虚さ。
淡々としゃぼんさんらしい語りで
また私をしゃぼんさんの世界へと誘ってくれました。
一緒に自転車を漕いで冷たい風と香りは感じたけど
でも、重みだけは実感がない。
私は空ちゃんをあまり抱っこしてないのかな?
今日からたくさん抱っこしてあげようと思います。
気づかせてくれてどうもありがとう♪

| 花*杢 | 2016/05/04 4:36 PM |
ぐるこさんへ*

読んで下さってありがとうございます*
丁寧な日々・・・いえいえ
ぐるこさんにはおよびません><;
また しゃぼんになったときにはどうぞよろしく!^^*
| にゃんすず | 2016/05/13 8:49 PM |
花*杢さんへ*

読んで下さってありがとうございます*
小説は自由でいいですね。
自由ゆえの大変さはもちろんありますが@@;

花さんの読み方の深さってすごいですね。
自分の体の隅々にまで語感を感じ取ろうと
無意識にできてるなんて@0@

だっこを嫌がる猫は多いですが
子猫の時はみな 母猫にくわえて運ばれたり
押さえつけてなめられたりしているので
それほど嫌じゃないと思います。
空ちゃんのこと
たくさん抱っこしてあげてねっ*^^*
| にゃんすず | 2016/05/13 8:59 PM |
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