・。*明日晴れるかな*。・

薔薇、猫、物語、弁当作りとショパンが好き!今は雨でも虹色の人生めざして航海する日々の出来事*


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『雨ハキライ大キライ』最終回♪
 

  雨ハキライ大キライ 





最終回





森を歩いていた。

爽やかな晩夏の午後だった。
大きな木が茂り、遥か遠くには山も見えるこの高台は
音大のすぐ裏にある。
ここは一般に開放されたある有名な文豪の土地で
見たことはないがこの広い敷地内に、家もお墓もあると聞いた。

授業の空き時間があると、よく散歩にくる場所だった。
隣の小学校からは子供たちの元気な声が聞こえる。
裏の音大からは管楽器の、のんびりとしたちょっと間抜けな
練習の音も聴こえる。
微かにレッスン室から漏れ聴こえるピアノやバイオリンや
鳥のさえずりの様な歌声も聴こえた。

通る人々の足で作られた細い小道が、ゆるやかに曲がりくねりながら
続いている。いつもより奥に進んでみると、東京とは思えないほどに
のどかな草原が広がっていた。そこから見える風景は私の田舎に
よく似ていた。



              z


青い空、緑の山、鳥のさえずり、みな美しい。
人々が絶えることなく草をかき分けて歩き、この小道を作ってきたわけが
良くわかった。
なだらかな坂で座るのにちょうどいい芝生の上に座った。
大きな木がゆらゆらと優しい木陰をつくっていた。

今日は私には珍しく、花柄の半袖ブラウスにロングスカートだった。
こんな私でも絵になってるだろうか、などと想いにふけった。
小学校のお昼を知らせるチャイムが鳴ると、グゥ〜〜っとお腹が鳴った。
その音があまりに長くてひとりでクスッと笑った。
お昼にしようと鞄を開けると、おにぎりが2個入っていた。
あれ?今日お弁当じゃなかったっけ?
そうだった。
今朝は作る時間がなくて、駅前のコンビニでお茶とこれを買ったんだっけ。

おにぎりを食べながら今朝のアパートの台所を、そして出かける前の
自分を思い出していた。何かが足りなくて、思い出そうとしていた。
何かが足りないのだ。まだ忘れている何か。
それを頭の中で探した。



           c


部屋を出るときのドアの形が浮かび上がった。
その長方形のドアが小さくなって、棚の上に視線は移った。
お母さんの写真立てだ。
わかった。
忘れてた何かはお母さんの写真への挨拶だった。
いつからしなくなったのか思い出そうとするけれど
薄ぼんやりとしてはっきりと見えない。
今まで毎日欠かしたことがなかった挨拶。母を忘れてるわけじゃない。
ピアノの実技試験で忙しく、自分のことで精一杯だったからだ。



             z

日常を忘れるほど練習した自分の手がどうなっているのか見ようと
両手をひろげ、いろんな角度から眺めているうちに子供の頃に見た
お母さんの手とそっくりなことに気づいた。
まるでお母さんがいるみたいだ。

さっきまでひんやりと通り過ぎた風が温かくなり、芝生の葉先が
「ソウヨソウヨ」と揺れていた。

陽の当たるほうへ両手をかざして見ると、赤い血が流れているのが
透けて見えた。流れているのは私のだけじゃない。お母さんの血もだ。
お腹にいる時に分けてもらったのだ。
お母さんはいつも私の中に一緒にいる。そんな当たり前のことを
今やっとこの手を見つめて知った。



その時、誰かの声がした。
「遊さん」

雨ちゃん?!

                x

振り向くと、天宮だった。
チェロを持たずに木の幹に体を半分隠すように立っていた。
ふんわりと風が吹いて、天宮の頬に長い黒髪が揺らぎ、微かな笑みを
浮かべていた。

私と目が合うとゆっくりとこっちに歩いてきた。
私の隣に同じように座ると
「おめでとう。この前の試験、萌子さんと同点1位だったね」
なんで知ってるんだろうと思いながら、
掲示板に結果が張り出されていたことを思い出した。
あの時は学長のはからいで失格にはならなかったのだ。
「うん、ありがとう」
私はそっけなく言った。
「すごいね。コンクールとか留学とかするんやろ」
「…しないよ。卒業したら、田舎に帰って幼稚園のピアノ教室で
 子供たちに教えるの」
「えーそうなん」
「お母さんのいた幼稚園で仕事がしたいの。お父さんもミミーも
 待ってるし」
「そっかー、でも試験の時先生達が拍手してすごかったんやて?」
「え、・・・あ、・・・うん」
「333号室にバックテンして入ったんやろー?」
「え…?!」
言い訳する間も与えず、天宮は楽しそうにしゃべり続けた。
「それに靴脱いで、裸足で弾いたんやてな〜すごいわ〜!」
天宮がこんなにしゃべるのは初めて見たが
雰囲気が雨の妖精そのものだった。

「それ、違うよ」
私は彼が一息ついたところを見計らって言った。
「え?!違うん?」
「普通に少し遅れて行って、普通に弾いただけ」
と、私は出来る限り普通に言った。
あの日の事が芸能界の噂話じゃあるまいし、伝言ゲームみたいに
面白可笑しく伝わっている。ちゃんと説明するのも面倒だった。

あの緊張で押しつぶされそうな自分を思い出したくもなかった。

天宮はちょっとがっかりしたように声を落とし
「そうなん・・・」
と言って、私から目を逸らして前に見える山の方へ顔を向けた。
天宮は、雨の妖精の生まれ変わりじゃないかと思うほど
本当に瓜二つだった。
少しの沈黙のあと勇気を出して前を向いたまま
小さな声でつぶやいた。


                z


「雨ちゃん・・・・」


天宮には聴こえたはずだった。
けれど彼は1mmも動かず、黙って前を向いたままだった。


大きなカラスが1羽、木から木へ飛び、小鳥達が可愛い声で
さえずりながら何十羽も別の木々へと移り飛んだ。
羽音だけが空に消えていった。
戻った静寂のあとで、また私から口を開いた。
「雨の日にね、雨の妖精と出会ってね、いつも私の前に現れて
 励ましてくれたの」
「・・・・」
天宮は黙っていた。
「雨の日の嫌な事ばかり覚えていてね・・・」
「・・・・」
まだ天宮は黙っている。
「雨の妖精は私以外、他の人には見えなくてね・・・」
「・・・・」
それでもまだ天宮は黙っていた。
「雨はずうっと嫌いだったの・・・」

今までの固まった空気が急に動いて天宮は私を見て言った。
「だったん?! じゃ、今は?!」

私は投げ出していた両足を胸に引き寄せて両手で両膝を抱きかかえ
天宮を見て言った。
はっきりと大きな声で。

「大ッキライ!」

天宮は大きな瞳で私をじっと見つめると
プッと吹き出し、大きな声で笑い出した。私もつられて笑った。


二人で何度も何度も笑った。
この意味が良くわからない嬉しさを手で掴みたくて
私は地面に付いた両手に触れた芝生の葉をむしり、思い切り
空に向かって投げた。

「芝生シャワーだ!」
そう言いながら何度もむしっては投げた。
それを見た天宮も面白がって真似をして
「芝生シャワーや〜!」
と言って、子供のようにはしゃいだ。
宙に舞うみずみずしい葉先は私の腕に舞い降りて
雨のように、皮膚とうぶ毛をくすぐると
するりと撫でて落ちた。

隣にいる雨の妖精みたいな天宮に素直な気持ちで言えた。
「明日もここで会おう!」
と。

彼は一点の曇りもない青空のような笑顔で言った。
「いいよ!」
と。





   アメダスでもワカラナイ雨がある。

   
   だから。。。





                      x


END




by しゃぼん

  



最後までお読みくださりありがとうございました。

とりとめもなく続きましたが今日で終わりです。
いつか少し書き加えや直しをしてまとめたいな、なんて思っています。
稚拙な文章ですが今までお付き合いいただきありがとうございました。
ちよりちゃんにはいつも、文になってない!とケナサレ続け@@;
めげずにグランド(どこが><;)フィナーレを迎えられ
嬉しいです。

ではまたね!



I love you

うにゃんうにゃん*


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| 2014.04.13 Sunday (20:30) | 雨ハキライ大キライ | comments(2) | trackbacks(0) |
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