・。*明日晴れるかな*。・

薔薇、猫、物語、弁当作りとショパンが好き!今は雨でも虹色の人生めざして航海する日々の出来事*


<< September 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
最終回*ぼくのおうちへ*
 

 きみの帰るおうちへ 



12のプレリュード No・12(後編)


最終回


*ぼくのおうちへ*




海の見える丘にある祖父の家の門の前で
有田氏と僕は呼んだタクシーを待っていた。



その時 快晴の上空で微かに、そして次第に
プロペラ音が近づいてきた。
僕らはおもわず見上げた。
耳がつぶれそうなくらいのごう音で、低空飛行の
ヘリコプターが何台も通り過ぎていった。
ちょうどタクシーがつき、乗り込んで行き先を言ったけれど
そのごう音でかき消された。

「私は新潟駅から乗り換えて、拉致被害者のお宅へ行く
 約束があるので」
と、有田氏はヘリコプターが去る静けさを待って言った。
タクシーが走り出すと僕はもう一度海を見た。
水平線に小さく船が3艘、止まっているかのように浮かんでいる。
夕陽まえの太陽は過ぎ行く時間に「行くな」とすがりつくように
じり暑かった。

駅に着いた。
僕らはタクシーを降りた。
「今日はありがとうございました」
と 言うと 有田氏は
「いいえ、こちらこそありがとうございました」
と、めがねの奥の目は毅然としてぶれることの無い
遠い的を見つめているようだった。

「父と母に会うために僕は何をしたらいいんでしょうか」
別れ際に言った。
「具体的なことはまた連絡します。拉致被害者友の会の会合が
あるときは是非出て下さいね。とにかくいつも通り過ごしていて
下さい」
「はい。わかりました」
僕は子供の頃のように従順だった。

彼は 「じゃ」と片手を顔の高さまで上げて、改札を抜け
ホームに入っていった。有田氏の後姿はどこにでもいる
ごく普通の中年そのものだ。
フリージャーナリストとして世界を駆け回り
時には危ない橋も渡ってきた人だなんて
言われなければ全くわからない。周りの風景にとけこむ
保護色のように あまりにも自然で目立たない。
完全に彼の後姿が見えなくなった。



僕は駅構内のコーヒー店に次の新幹線まで
時間をつぶそうと、入った。
挽きたてコーヒー豆のいい香りがする。
店内は客もまばらだった。
アメリカンを注文してぼんやり辺りを見た。
全体に薄暗い落ち着いた照明で
今日一日の興奮が鎮まるようだった。

運ばれてきたアメリカンをブラックで飲んだ。
緊張が解けてきて軽い眠気をおぼえた。
目の前がかすみがかっている。
BGMのジャズがすごく控えめで心地いい。

 突然コーヒー店の入り口から有田氏が飛び込んできた。
 たいへんだ。今、お父様とお母様がヘリコプターで
 救助されてこっちへ向かっているそうです。
 有田氏の顔が2重に見える。そのうえぼやけて
 ゆらゆら揺れている。
 え。それはたいへんだ。はやくいかなきゃ。はやく。
 どこへいけばいいんですか。有田さん。
 どこへいけばいいんですか。ぼくはどこへいけば。


僕は背もたれに頭をぶつけて目が覚めた。
夢か。

一瞬の深い眠りに吸い込まれていた。
コーヒー店の入り口は閉ざされたまま。
店員がゆったりとカウンターの中で食器洗いをしている。
ここに来る前も、来た後も、僕の周りは何も変わってない。

変わらないことがこんなにも哀しいだなんて。

1年365日休むことなく、昇る太陽も沈む太陽も
闇を照らす月も輝く星も、誰も教えてくれなかった。




会社に電話をして 母のピアノはとりあえず
ショールームの空きスペースに
置かせてもらうことにした。
僕の借り住まいではピアノは置けないのだ。
そうだ。
以前、ドイツ製のグランドピアノを処分したローズさんは
あの後、まだ新しいピアノを決めてないはずだ。
今度彼女に電話してみよう。
もしかしたらピアノが置ける僕の自宅が用意できるまでの間
ピアノを預かってくれるかもしれない。
ローズさんの家の周りはバラの枝が絡みついていたことを
想い出した。穏やかなローズさんの声が想い出せた。

そろそろ時間だ。
残ったコーヒーを飲み干してレジの前へ行った。
中年の女性店員が言った。
「300円です」
「安いね」
と、僕が言うと
「そんげことねーですて」
と、目じりにしわをよせ、笑顔で言った。
「え?」
僕は方言らしき言葉を聞いてすっかり目が覚めた。
眠気覚ましにはコーヒーより効き目がある。
ものすごく昔懐かしい気持ちになった。
新潟にいた祖父と祖母との記憶は無いに等しいが
僕の体が覚えていたんだ。





発車のベルが鳴った。
東京行きの新幹線に乗って
僕は帰る。



ぼくのおうちへ





END


   by しゃぼん




最後までお読み下さりありがとうございました
またいつか甲本直人と会えるといいのですが*
とりあえず終わります。
来週?さ来週?
新しい何かを書く予定です^^
また見に来て読んでね^^

今日は七夕*
  星に願いを書き記しました



今日もきてくれてありがとう

また明日!
人気ブログランキングへ

ぽちっとおしてにぇ
I love you






| 2013.07.07 Sunday (13:06) | 12のプレリュード | comments(2) | trackbacks(0) |
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECOMMEND

 
人気
MOBILE
qrcode
LINKS
PROFILE
SPONSORED LINKS